はじめて

2/3

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「ねぇ、伊達の旦那?」 「An?」 「俺様さぁ……そろそろ限界なんだけど」 「What?」 「Whatって……はぁー……」 学校からの帰り道、少し遠回りしようと誘って誰も通らないような脇道に誘導したはいいが、伊達の旦那がこの調子だから困る。 「今日で丁度1年目でしょ?」 「何が」 「とぼけないでよ」 「Aaー……そうだったな」 そう、今日は記念日なのだ。 一応ちゃんと覚えていてくれたらしい。 「で、それが何だ」 「うわ、酷っ……それが一年何にもさせてくれなかった彼女が言う台詞?」 この人は普通の恋人達がすることを一つもさせてくれなかったのだ。 キスしかり、ハグしかり、手を繋ぐ事さえ許してくれなかった。 「Girl friendじゃねぇし」 「立場的には彼女じゃん」 「そういうアンタの方が女々しいと思うが?」 「そういう屁理屈いわないの」 全く……いつもこんな風にはぐらかすのだから。 だが今日ははぐらかされてやらない。 「ね、誰もいないし、今日くらいしてもいいでしょ?」 「I turn you down.」 「……何て言ったの?」 「断る」 「そんな頑なに拒まなくても……」 はぁ、とため息をつく。 いつもならここで諦める所だが、今日はもう少し押してみる。 「ねぇ」 「今度は何だ」 「伊達の旦那ってはじめてなんだっけ?」 「何が」 「誰かと付き合う事から全部」 「……だから何だよ」 「怖じけづいてるんだ、天下の独眼竜様なのにねぇ」 独眼竜とは伊達の旦那のあだ名だ。 誰かが同姓同名の偉人から名付けたと聞いている。 「なっ……」 「だから出来ないんでしょ?ハグとかキスとか」 「出来ないわけねぇだろ」 「じゃあしてもいいよね」 「っ……」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加