きすがすき

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「なぁ、猿飛」 ソファーにもたれつつ、何気なくテレビを付けたらやっていた恋愛ドラマを見ていたら、後ろから恋人に声をかけられた。 「名前呼びじゃなかったら返事しないって言わなかったっけ?」 そんな我が儘を言って、テレビから目を離さないでおく。 「……じゃあ、佐助」 「なあに?」 じゃあ、とついていたのが少し気に入らなかったが、それでも名前で呼んでくれたのが嬉しくて、笑顔で振り返る。 すると、かなり政宗の顔が近くにあり、ついでに自分の唇に軽く政宗の唇が触れた。 こちらが驚いているのを見て、政宗は満足げにクスッと笑う。 「……んもぅ」 不意打ちのキスに優雅な微笑み。 「……可愛すぎっ」 政宗が逃げる前にすかさず振り返って捕まえる。それでもってぎゅーっと力を込める。 「ちょ……苦し」 「政宗が悪いんだよ?」 「……キツい、っての」 「もう少しだけ我慢しててよ、ね?」 だって政宗が可愛いのが悪いんだから。 「ったく……」 互いが話すだけで耳に息がかかる距離。そこで政宗ははぁ、と息をついた。ちょっとくすぐったくて、思わず力が緩む。 「スキあり」 その隙に政宗は腕から抜けて、俺様から離れた。その際、ついでに手の甲にキスをしていった。 多分、一番距離が保ててキスがしやすい場所だったのだろうが…… 「ちょっと待って!そこにキスするの俺様の役目だし!」 「Why?」 「ナイトだから」 「……オレはprincessじゃねぇ」 「俺様もお姫様じゃないし……っていうか、あんたがお姫様じゃなかったら何だって言うの」 「Prince?」 政宗はしれっと言ってのける。確かにそうとも思えない事はないが…… 「……この際、お姫様でも王子様でもいいけど、とにかく、俺様はナイトなんだからね」 政宗の前に回って、今のやり直し!と主張してみる。政宗は仕方ねぇなと左手を差し出してくれた。 「ほら、」 早くしろよ、と急かしてくる。待つのが苦手なのか、なんなのか……いずれにしろ、その我が儘な態度はやっぱりどこぞのお姫様に似ている。
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