26人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「なぁ、猿飛」
ソファーにもたれつつ、何気なくテレビを付けたらやっていた恋愛ドラマを見ていたら、後ろから恋人に声をかけられた。
「名前呼びじゃなかったら返事しないって言わなかったっけ?」
そんな我が儘を言って、テレビから目を離さないでおく。
「……じゃあ、佐助」
「なあに?」
じゃあ、とついていたのが少し気に入らなかったが、それでも名前で呼んでくれたのが嬉しくて、笑顔で振り返る。
すると、かなり政宗の顔が近くにあり、ついでに自分の唇に軽く政宗の唇が触れた。
こちらが驚いているのを見て、政宗は満足げにクスッと笑う。
「……んもぅ」
不意打ちのキスに優雅な微笑み。
「……可愛すぎっ」
政宗が逃げる前にすかさず振り返って捕まえる。それでもってぎゅーっと力を込める。
「ちょ……苦し」
「政宗が悪いんだよ?」
「……キツい、っての」
「もう少しだけ我慢しててよ、ね?」
だって政宗が可愛いのが悪いんだから。
「ったく……」
互いが話すだけで耳に息がかかる距離。そこで政宗ははぁ、と息をついた。ちょっとくすぐったくて、思わず力が緩む。
「スキあり」
その隙に政宗は腕から抜けて、俺様から離れた。その際、ついでに手の甲にキスをしていった。
多分、一番距離が保ててキスがしやすい場所だったのだろうが……
「ちょっと待って!そこにキスするの俺様の役目だし!」
「Why?」
「ナイトだから」
「……オレはprincessじゃねぇ」
「俺様もお姫様じゃないし……っていうか、あんたがお姫様じゃなかったら何だって言うの」
「Prince?」
政宗はしれっと言ってのける。確かにそうとも思えない事はないが……
「……この際、お姫様でも王子様でもいいけど、とにかく、俺様はナイトなんだからね」
政宗の前に回って、今のやり直し!と主張してみる。政宗は仕方ねぇなと左手を差し出してくれた。
「ほら、」
早くしろよ、と急かしてくる。待つのが苦手なのか、なんなのか……いずれにしろ、その我が儘な態度はやっぱりどこぞのお姫様に似ている。
最初のコメントを投稿しよう!