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夜明けの森のジータ15
「ジータはダメだ。おれはジータに惚れてるんだ。お前にはエバがいるじゃないか。おれの母親のエバをたぶらかして、一緒に住んでるんだろう」
「エバにはもう飽き飽きしたんだ。もっと若い女がいい」
「そうだ!メイドのモエがいる。彼女をお前の所へ行かせよう」
「いいだろう」
「交渉成立だな。天使を殺害する方法を教えてくれ」
「わかったぜ。おれに任せておけ。明日、会おう」
サタンはにやりとして言った。
サタンが帰ると、ジータはおれに言った。
「サタンは信用出来るのかい?」
「信用するしか方法はない。長い付き合いだから、裏切ったりはしないだろう」
「カイン、さっき言ったことは本当かい?」
「お前に惚れているってことか?」
「ああ」
「本当だ。おれはジータが好きだ」
夜明けの森のジータ16
ジータは顔を赤くして言った。
「黒ヤギのカイン、引越しの準備があるから、今日は帰るね」
「ああ。気をつけてな。黒い森にいる豹の顔をした男がうろついているらしいから」
「カイン、わかったよ」
ジータは杖に乗って帰って行った。
明日はジータがいない方が都合がいい。
おれとサタンが天使をつかまえて、なぶり殺しにしている所を、ジータには見られたくなかったのだ。
翌朝サタンは約束通りやって来た。
「カイン、屋根にちょいとしたしかけをして来る。見えない蜘蛛の糸を張り巡らして、天使を生け捕りにしてやろうぜ」
悪魔サタンはそう言うと、屋根へ上がった。
サタンは恐ろしく悪知恵が働くやつだった。
エバがたぶらかされるのもしかたあるまい。
しばらくすると、東の空から太陽を背にして、天使の警務隊が二人、弓矢を手に持って飛んで来た。
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