第1章

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
夜明けの森のジータ1 ある日、おれに手紙が来ていた。 それは夜明けの森に住む、女魔法使いのジータからだった。 ずいぶん久しぶりだった。 ジータの手紙には次のように書かれていた。 【親愛なる黒ヤギのカインへお前がエデンの園を追放されて、ずいぶんと時が流れたね。元気にしてるかい?お前に殺されかかった白ヤギのアベルは、やっと傷も治り、白ヤギ図書館の館長をしてるよ。久しぶりに二人で会いに行って見ないか?アベルとカインが仲直りをするのを見たいのさ。もし行きたいなら、明日エデンの園の入口で待ってるからね】 夜明けの森のジータ2 おれは絶好の機会が来たと思った。 この間は白ヤギのアベルを殺しそこなったが、今度こそ殺してやる。 おれがエデンの園から追放される羽目になったのは、エホバ神が不公平だったからだ。 おれはエホバ神に、最上の小麦を捧げた。 するとアベルはヤギの乳を捧げた。 エホバ神はアベルの捧げたヤギの乳を祝福され、おれの小麦は火で焼きつくされた。 おれが極上のぶどうを捧げると、アベルは仔牛を捧げた。 またしてもエホバ神は仔牛を祝福された。 生後20ヶ月を過ぎていて、BSEかも知れない仔牛を祝福して、おれのぶどうは踏み潰されてしまったのだ。 どう見ても不公平だと思った。 怒りと殺意が沸き起こって来た。 おれはアベルを呼びだし、殺害しようとした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!