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夜明けの森のジータ31
「黒ヤギのカイン、何をびくびくしてるんだい?」
ジータが言った。
「私はお前がどんなことがあっても平然としている所や、自信満々で何でもやる所に惚れたんだ。時には残酷きわまりないことを、平気でやる所も好きなんだ。そのお前が、どうしてしまったんだい?」
「エホバの全軍なんかくそくらえだ。少しも恐くないぜ。天使達が飛んで来たら、生け捕りにして、昆虫採集ならぬ天使採集にしてやるぜ。竹槍で串刺しにしてやる」
「それでこそ黒ヤギのカインだ」
「だがイエス・キリストは違う!おれはイエス・キリストだけは恐ろしくてたまらないのだ」
「どうしてイエスを恐れるんだい?元はと言えば、大工の息子じゃないか!」
ジータは声を荒げた。
夜明けの森のジータ32
おれはジータと話すうちに、しだいに自信を取り戻して行った。
「ジータ、お前の言う通りだ。大工のヨセフの息子じゃないか。恐れることはなかったんだ。おれの母親のエバは、おれが生まれるとすぐおれの色が黒いと不満をもらして、おれを森の中に捨てやがった。おれはたまたま通りかかった黒ヤギのボスに助けられた。それでおれの名前は黒ヤギのカインと呼ばれるようになった。おれはエバをうらんでいた。そこでサタンに頼んで、エバを誘惑するように頼んだ。エバがエデンの園で暮らして、おれは黒ヤギと暮らすのは、どう見ても不公平だろう。サタンはまんまとエバを誘惑することに成功した。そのため楽園からアダムと一緒に追放されることになった。いい気味だぜ」
「黒ヤギのカイン、一つ質問があるんだ」
「何だ?言って見ろ」
「エバはリンゴを食べただけだよね。リンゴを食べたら、楽園を追放されるのかい?」
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