第1章

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夜明けの森のジータ3 おれはアベルを殺害することにした。 おれとアベルは双子なのに、アベルの色は白くて、おれの色は黒いのが不満だー! ある日、おれはアベルを呼び出した。 今まで食べたことのない、うまい物を食べさせてやると言った。 畑のそばの作業小屋で、おれは小麦粉を練ってうどんを作った。 まもなく白ヤギのアベルがやって来た。 「黒ヤギのカイン、うまい物とは何だ?」 おれはうどんを出した。 アベルがうまそうに食べている時、おれは後ろからアベルの頭を羊の足の骨で、思い切りぶんなぐってやった。 羊の骨は、きのうアベルの白ヤギ牧場から羊を盗んで、それを殺して作ったものだ。 アベルが前のめりに倒れると、おれはアベルをかついで崖のそばへ行き、そこから下へ投げ落とした。 夜明けの森のジータ4 翌日、早くもエデンの園の天使の警務隊が、おれの家にやって来た。 警務隊長が言った。 「黒ヤギのカイン、アベルをなぐったのはお前だな。お前は日頃からアベルをうらんでいただろう」 「警務隊長、おれは知りませんぜ」 「アベルがお前の作業小屋へ行ったことはわかってる。白い毛がそこらじゅうに落ちていた。一つおかしなことがある。白ヤギのアベルは白い糸のような物をくわえていた」 「アベルは死んだのですか?」 「幸い一命は取り留めた。だが頭をなぐられたせいで、記憶喪失になっている」 結局おれは、アベルをなぐった犯人として、エデンの園を追い出された。
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