第1章

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夜明けの森のジータ9 有害図書というのはほかでもない。 おれの母親のエバが蛇に体を巻かれて、恍惚とした表情を浮かべている絵が載っている本だ。 おれはその本を悪魔サタンから手に入れていた。 べらぼうに高かったが、目的達成のためにはしかたあるまい。 白ヤギのアベルは正義感の強いやつだから、有害図書を見つけると、必ず食べてしまうだろう。 おれは有害図書に毒を塗っておいたので、アベルがその本を食べると死ぬという寸法だ。 おれが館長室へ帰って見ると、ジータとアベルは白ヤギのミルクを飲んでいた。 「ジータ、そろそろ帰ろうぜ」 おれは出された白ヤギのミルクを飲み干すと言った。 おれとジータは白ヤギチーズを土産にもらって、図書館をあとにした。 夜明けの森のジータ10 翌日、エデンの園新聞を見ていると、白ヤギのアベルが死んだというニュースが載っていた。 おれは黒ヤギダンスをして喜んだ。 これでアベルの物は、すべて双子のおれの物になる。 白ヤギ牧場も白ヤギ図書館も、おれの物になるのだ。 おれは早速黒ヤギ牧場の黒ヤギを囲いから放してやった。 黒ヤギ達は白ヤギ牧場を襲撃して、白ヤギの娘を押し倒して、子供を作った。 そのうち白ヤギ牧場のヤギは全て黒くなるはずだ。 おれは図書館の屋根と壁を黒く塗り替えた。 名前も「カインの公文書図書館」と変えた。 おれは図書館の館長室で過ごすことが多くなった。 メイドを雇い、身の回りの世話をさせていた。 ある日、予期せぬ訪問者があった。 創造者エホバ神の公安警察の予言者イザヤである。
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