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「一人暮らしってさ、どんなかな」
いきなりそんな質問をされたのは夕暮れ時の学校からの帰り道だった。
手に持っていた木の棒を民家のコンクリート壁に擦り付けながら明智ちゃんはそう呟いた。
いきなりの事だったので咄嗟にいい受け答えも思い浮かばなかった僕は「大変なんじゃない」と誰もが容易に思い付く程度の助言しか出来なかった。
急に明智ちゃんが立ち止まったので僕も立ち止まる。
後ろを振り返るとコンクリート壁に一本の長い線が蛇行を繰り返しながら僕等の横まで伸びている。
へびみたいだね。
明智ちゃんならそういうと思ったんだけど、明智ちゃんはただじっと目を細めて細長く伸びた線を見つめているだけだった。
買ったばかりの鉛筆くらいあった木の棒も今や新しいのを買うか悩むくらい短くなってしまっている。
明智ちゃんはまだ動かない。何かを考えてるんだろうけど顔に笑みは無かった。
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