黒き大剣使い―セナ

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 手に握った大剣、ビジッグソードからポツポツと落ちる緑色の小さな水滴が、地面に染み込んで消えていった。  この緑色は目の前に立ちはだかる《寄生葉》に取り付かれた元人間の血だ。《寄生葉》は名の通り、動物を苗床とし寄生する《寄生種子》の一体だ。寄生した動物を養分に花を咲かせ、花粉を飛ばす。そうやって子孫を残していく奴ら。寄生された動物は死に、その死体は《寄生種子》が操って自己防衛に使う。倒す方法は花を寄生する体から切り取るか、寄生する体ごと燃やすかのどちらかだ。 先に挙げた性質から、《寄生種子》はかなり厄介で危険な敵であり、《種子》たちの中では特に忌み嫌われている。  この植物人間もそうだ。ツタで覆われた背の中心に椿のように赤い花がつぼみを付けていた。つぼみの状態から考えてだいたい一ヶ月くらい前に寄生されたのだろう。 「今、解放してやるからな」  寄生された人間に向かってそう言いながらビジックソードの柄を持ち直した。夕日に当たった黒い刃がギラリと光り、それを見た植物人間の背から何本ものツタがムチのようにしなりながら飛び出してきた。 「ハァァァ――――ッ!」  地面を強く蹴って俺は駆け出した。
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