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ガバッ!
「またあの夢か……」
ベッドから身体を起こしたオレは、今の今まで見ていた夢について考えをめぐらせる。
が、結局いつものように結論を出すことはできなかった。
早々に思考を諦めたオレは寝ぼけ眼を擦り、視界をはっきりさせてみる。
辺りは見慣れた場所。当然だ。ここはオレ……いや、正確には『オレ達』の部屋なんだから。
「ったく……一体何なんだっつーの……」
幼い頃から度々見ていた夢。しかも、最近ではより長く、よりくっきりと内容を見れるようになってきた。
たが、おかしな点がある。夢の中のオレはいつも誰か特定の人物と話している。しかし、その顔だけはいつも霞がかかったように見えなかった。
さらに不思議と内容を忘れることもない。今までに何度も見せられていたからか、それとも他に理由があるのか……
「……起きよ」
とりあえずベッドから足を下ろし、『同室者』を起こさないように足音をたてずに部屋の扉に向かう。
時間を確認してみるといつもよりだいぶ早い。ねぼすけのオレが起きたなんてマジで奇跡だ。
いつもなら爆睡しているオレを起こそうと同室者の奴が奮闘しているくらいだからな。
そんな稀にみる朝を迎えたオレは、音をたてないように静かに扉を開けた。
これがオレ――神乃 凛(カンノ リン)のいつもの日常の始まりだった。
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