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「レイさん、お待たせーっ」
陽が落ち、付き合ってほしいと連れてこられたのは、港湾近くの自然公園。
広場のベンチで待っててと、
座って夜が濃くなってゆく空を眺めて数分後、こちらに走り寄るその手には
「…花火?」
「せや!レイさんとしたいなーと思ってな」
様々な種類の花火が詰まった袋を子供のようにかざす。
「ドイツではな、年末年始だけは誰でも花火をあげてえぇんや」
それこそ、打ち上げ花火でも。
幼少からドイツに住まっていた話は聞いていたのだけれど、
「皆奈も毎年あげてたの?」
「俺は、したことないんや。邸の周りで打ち上がるたくさんの花火を眺めてるだけ」
一緒にやる奴も、おらんかったしな。
冬の澄んだ夜空を仰いだ深緑と自嘲気味に引き上げられる口端に、詳しくは聞けず。
「でも、今年はレイさんが居るから」
何でも一緒にしたいと思うから。
嬉しそうに目を細めた皆奈をただ黙って抱き締める。
「レイさん?」
「うん、しよう。花火」
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