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「コレで最後だね」
「せやな」
手持ち花火を終え、残ったのは小さな打ち上げ型。
「あ、中にパラシュートが入ってるやつだね」
「取るとラッキーってやつやろ?」
危ないからとレイから距離をとって点火する。
小さな破裂音と共に光が夜空に登り、咲いた煌めく花。
そして、ゆっくりと舞いながら落ちてくるパラシュートの影。
「レイさん、そっち行ったでー」
「ん、っと」
ぽす、
「今年はじめからラッキーやな」
「うん、」
――――と、
紙のパラシュートの先に付いた重りに違和感を覚えて
「“Open me”…?」
重りに巻かれた紙の表面に書かれた文字に首を傾げる。
こんなの書いてたっけ?
そうして、躊躇いながらも開ければそこには
「あ…」
彫りが施されたシルバー製のリングが転がりでて、静かに掌の中に収まった。
視線をあげれば少し照れくさそうに笑う姿。
「皆奈、これ…」
「俺からレイさんに。俺がレイさんを好きだって気持ち」
何よりも大切だという気持ち。
それを形にしたくて。
「あの、せんでもえぇから!ただ俺が勝手に―――
「ありがとう」
遮られて首に回された腕は少し震えていて。
「ありがとう、皆奈」
「…お礼言うんは俺の方や」
安堵と喜びで熱くなる瞼を閉じ、恋人の体を優しく、優しく抱き締める。
「レイさんを好きになって、好きになってもらえて。…昔の俺じゃ一生得られん沢山のものを教えてもらったんや」
喜びや温もり、そして、
幸せ―――
「今度、俺の話聞いてくれる?」
何もなかった頃の自分を
「うん、皆奈が話してくれるなら」
喜んで
「ありがとう…レイさん」
傍に居てくれて。
出逢ってくれて。
すべての気持ちを込めるように、
瞬く星空の下、
深く深く、唇を重ね続けた―――
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