Chapter1

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「ウチのサークルは」 夕紀子に連れて行かれた先で、雪乃は並木ギターデスクの説明を受けていた。 彼女の目の前に座って説明を続けているのは、真っ赤な頭髪をした好青年。 名を、篠本真央と言った。 「まあ色々やってはいるんだけどな。やっぱ一番コアなのはギターってとこか」 言いながら、彼は手許のアコースティックギターを掻き鳴らした。 のびやかな弦の音が辺りに響く。 「良かったら、入ってくれよな。まぁ楽しいから」 そのとき、彼女は少しだけ迷っていた。 並木のサークルには入らないと決めていたのだが、篠本の説明を受けるうちこのサークルが魅力的に思えてきたのだ。 だが、僅かに残る意地のためかすぐ頷く気にはなれず、雪乃はしばらく無言のまま下を向いていた。 「無理に勧誘しなくても」 と、不意に雪乃の背後から聞き慣れぬ低めの,呟くような声が聞こえる。 振り向くと、そこにはやはり見慣れぬ男性が立っていた。 年頃にしては少し小柄な青年だ。 鋭く、何かを睨むような表情をしている。 「おー。友樹くん。何か言った?ごめんよく聞こえんかった」 「無理に勧誘しても,そういう人ってすぐやめてしまうじゃないですか」 友樹と呼ばれた男の言葉が、雪乃の闘志に火を付けた。 何よいきなり。2年だか3年だか知らないけど。 というか。ちょっと怖い。けど!とにかく妙に腹が立つ。 「ここに入れてください」 さっきまでの優柔不断さが嘘のように、彼女は高らかに宣言していた。
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