Chapter1

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「落ちたの?」 「落ちたみたいね」 頭の中が真っ白になった。 「浪人か…」 落ちるとは思ってなかったから、予備校のパンフレットは全部捨ててしまっている。 ってことは一から予備校探しをしないと駄目か…と落胆していると、母さんが思いがけない台詞を口にした。 「並木学院大に行きなさい」 「えっ」 並木学院大学。名前くらいは知ってる。現に私もそこの法学部を受験している。 が、並木学院の所在地は私の自宅からはかなり離れた場所である。 そこに毎日通学しろと言うのは、ちょっと無理すぎるハナシであろう。 「まさか、母さん」 「そうね。あんた一人暮らしになるわね。まあ頑張りなさい」 そう言い残し、母さんは茫然とする私を放置してさっさと部屋を出ていった。 絶対、これは人生初の挫折だ。 第一志望校には落とされるわ自宅からは出されるわで、まさに踏んだり蹴ったりだ。 ああ、 これから4年間、どうしよう。
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