Chapter1

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入学式が終わると、大抵どこの大学でも"サークル勧誘期間"なるものが始まる。 雪乃が入学した並木学院も、 その中のひとつだ。 「サークルねえ…」 いまだ三橋大への未練を捨てきれていない雪乃は、どこか冷めた目で上級生たちの必死の勧誘活動を眺めていた。 大学生になったら、サークルもアルバイトも、もちろん勉学だって頑張るつもりだった。 が、それはあくまで三橋大に入学することを前提とした抱負にすぎない。 彼女に、この並木学院でその抱負とやらを実行する気はサラサラなかった。 サークルなんて遊び人の集団だ。 そんなチャラい集団に染まりたくなんかない。 自分は自分一人でひたすら学問を究めればいい。 下らないと呟き、雪乃は紙パックに少しだけ残っていたジュースを飲み干した。 そして空になった紙パックを丁寧に潰し、2mも離れていないゴミ箱に投げ入れた。 うまく入ったらしい。 彼女は、一人でにこりと笑った。
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