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「何故だ。何故、主が妾の前に立ち塞がるのだ!」
夜闇に響く、悲痛な叫び。
それを受け、彼は口を開く。
「……これが、俺の責任だからだ」
静かな呟き。悲しみを押し殺した呟きは、もはや無機質なまでに不動。
黄金の眼よりいくつもの雫を流す彼女を前にして、一切の揺らぎはなかった。
猛る蒼炎。背より蠢く一対の翼。開かれた眼の奥に宿る透き通った真紅が正面を貫く。
「――そうか。わかった」
六枚三対の翼が展開される。これ以上、語る言葉はなかった。
黄金眼の雫はとうに枯れた。
闇よりも暗々らしい翼を掲げ、飛翔する。
「燐、主と共に駆けた六日間は実に楽しかった。そして――」
閃光が迸る。
「これでお別れだ!」
悲しみが轟く。
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