1.彼女たちとの日常

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 悪魔の魔導書(デモンズ・ブック)なんてものを手に入れて、生活には劇的な変化をもたらしてくれたけれど、俺はちっとも嬉しくなかった。  いや、ちっともと言うには語弊がある。多少なりといい思いをさせてもらってはいるけれど、それを覆して余るほど、迷惑極まりないという方が適切だ。  けたたましく鳴り響く目覚まし時計を叩くように止めながら、眠い目を擦って体を伸ばす。節々が痛々しい悲鳴を上げ、思わず俺も悲鳴を漏らしてしまう。まだ休息を欲しているのか、ベッドから起き上がることさえ億劫にだった。  できることなら、ずっとまどろんでいたいものだが、そうは問屋が卸してはくれないだろう。すでに起床したらしい彼女たちの会話声がここまで聞こえてくる。会話の内容までは聞き取ることはできないが、放置していれば面倒なことになること間違いなしだ。  誰かひとりくらいまともな思考回路を持ち合わせてくれたら、どれだけ楽なことだろう。個性の塊たちに言っても無駄なことはわかっているが、あんな姿を見せられれば、どうしても言わずにはいられない。  まぁ、俺の手の回るところで、いたずら程度のことしかしていないのだから、多めに見てやるべきかもしれない。見過ごせないときには、俺の代わりに怒ってくれる人もいてくれることだし。
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