情けなく生き延びた色

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 私は罪を犯したのかもしれない。いや、犯したのだろう。過去からの事実と声が私にそう言っている。「いじめられる方が悪いんだ」「お前は私の子供じゃない」「君はダメな人間だ」似た言葉を沢山言われたから、私はそうなのだろう。そういえば暴力もあったな。  私は生きてる事が罪なのだ。期待も裏切った。きっと酷い事も他人にした。堕落もした。なんだ、どんどん理由が出来てきたじゃないか。黒が……黒ではなくなっていく。    街路樹の落ち葉をぐしゃりと踏んだ。バラバラに散っていく感触が足の裏に残った。私は目的地を思いついた。沈めようと。そういえばこの町からは海に行けることを思い出した。  そうだ、あの太宰の「人間失格」のような行動に向かおうと思ったのだ。そうだな、まさに私は「人間失格」の称号が相応しいのだから。何も考えなく、それでも黒が別の色に変わっていくのを感じながら海に向かった。    静かに砂浜を踏む。水に浸かっていく。あれは最後の水にはならなかったのか。腰、肩まで浸かる。沈む。沈む。沈む。  苦しい。私は苦しいと思ってしまったのだ。苦しくて堪らない。助けてくれ。助かりたい。    私は陸に上がり、情けなく茶色い水を吐いた。
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