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   私の耳へ真っ先に届いたのは笑い合う男女の声と、木々のざわめきと吹き付ける風の音。 あれから自身の身に何が起きたのか。思考を纏めようとしても、襲い来る激しい頭痛がそれを妨げていた。  彼に騙された上、何度も腹部を殴られて私の意識や記憶も其処で一旦途切れている。 痛みから気を失ったのも生まれて初めてだったが、こんなに気持ちが悪く、混乱させられる物だったとは……  ──しかし今は、真っ暗闇の中で物を考えるより、自身は現在、どういう状況にいるのか。それを知る事の方が先決だ。 激しい頭痛に顔を歪めながら閉ざしていた瞳を開き、私は周囲の状況を確認しようと上体を起こす。  私の視界へ最初に飛び込んで来たのは、腕を組んで此方を睨む彼の姿と、その周りに屈んで土の上に、何か模様の様な物を描く五人の男女の姿だった。  次に私は自身の周りや空にも目を向ける。 意識を失っている間に、自宅の前から人気の無い雑木林の中へと連れ込まれている。辺りに見えるのは赤茶色の土と一帯に生える木々だけだ。空も茜色に染まり日没も近い。  こんな場所まで私を連れて来た彼等の行動を見つめ、怪訝そうな眼差しを向ける中、五人の中で一番身長の高い黒髪の男が私の顔を覗いて口を開く。 「紗輝。生け贄の子、目を覚ましたみたいだな」 「ああ、でも丁度良い。訊く所に依ると、クルゥストゥス様は恐怖で満たされた人間……特に女を好むそうだ。生け贄に捧げる人間として、こいつほど最適な奴もいない」  一番背の高い男と会話を交わし、此方に暴力を振るい気絶させた“彼”も私の顔を覗き見る。 どうやら男を含めて全員が未成年。 それも皆、学生の様に見えた。 一番年齢の低い者で小学生らしき人物も確認出来る。 ……そんな子まで、彼と一緒になって何をしようとしているのか。  頭に浮かんだ疑問を振り払う様に、白いマフラーへ指を掛けながら彼は私の前に歩み寄り、此方の前髪を掴んでその場に跪いた。 「気分はどうだ? 生け贄さん」  恐れから彼の顔を直視出来ず、沈黙したまま目を伏せる私の頬を平手で叩き、彼は作業を終えた五人の男女の前に戻っていく。 声を潜めて何かを話している様だが距離も離れている為、内容は全く分からない。 「もう嫌だ……」  訳も理由も呑み込めないまま、こんな場所へと連れ込まれた事に戸惑いを覚えつつ、私は身体を動かそうと両手両足に力を入れる。  
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