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   都市伝説の類いは何処にだって存在し、何処にでも流行する様な物だ。 怪談、怪奇現象、心霊スポット。 人は心の何処かで恐怖と言う物を求めたがり、それが都市伝説となって世の中に浸透していく。 適度に怖い話を訊き、適度なスリルを体感したいと思う者達の姿も色々と見てきた。  都会から少し離れ、閑散とした雰囲気を持つ片田舎。其所にある中学校でも、そんな取るに足らない都市伝説が広まっていた。 私が見聞きしてきた中で、クラスメート達の間で流行っている話は粗一つ。 何でも神霊を喚び、ある者の未来や、ある者の秘め事を暴き出す事が出来る占いに似た儀式。 所謂……“降霊術”という物だ。  噂を知る一部の生徒達からは、「クルゥストゥス様」という名前で呼ばれる呪い(まじない)について。 私自身は特に興味も持たなかったし、別段そういう物にはまる生徒達とは関わり合いになりたくない……と思っている。  私は生まれながらにして、心霊だとか怪談物だとか……そういう話が苦手なのだ。 心霊現象だの恐怖体験だの、夏場のテレビ番組でそういう物が放送されていれば、視聴する家族へ断りを入れる事無く、チャンネルを切り替えようとする。 子供の頃、お化けを題材にした絵本を母に読み上げられた時だって、私は泣き叫び朗読を止める様に懇願した程だ。 ……詰まり、私の性質は臆病者。筋金入りの怖がりとも呼べる位の物で、恐ろしい雰囲気を持つ女子グループからも、夏の間だけからかわれていた事もある。 「明日までに、プリントの小テストを片付けておくように、以上──」  昼休みに廊下で聞いたクルゥストゥス様の噂話が、頭から抜け切らないまま今日の授業が終わった。 噂話の無気味さにかまけて、授業の内容も余り頭には入らなかった。 起立と礼の号令の後、皆、堰を切った(せきをきった)様にどっと騒ぎ始める。 一緒に遊ぼうと声を掛け合う生徒達。教卓の前に群れ集まり、最近経験した面白い出来事を語り合う生徒達。  そんな光景を窓際の席で眺めながら、私はノートや教科書を並べて自身の鞄の中へと押し込んでいく。 笑い合える友達が居る生徒へ、羨望の感情を覚えつつゆっくりと席を立った。  私に友達は居ない。つい一ヶ月近く前には、幼なじみにして友達以上恋人未満とも呼び合える様な異性の友人も居たが、言い掛かりを付けられて訳も分からないまま、絶交を言い渡されている。  
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