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   今日の授業もあっという間に終了し、私は素早く学校を出て裏山を目指す。  山道のある方角へ下校する生徒の数も疎らであり、今朝、此方に声を掛けてきた背の低い男子生徒と出会してしまわない様、周りに気を配りつつ、昨日……白い世界から解放された時に、私が倒れていた雑木林の中へと向かう。 無くしていた制服の上着も、きっと其処にあるかもしれない。 抜けた記憶を取り戻せる様なヒントも、見付かればいいのだが…… 「景山。何で、彼奴を連れて来なかったんだよ。」  憤る男子学生の声を訊き、私は我を取り戻し物陰に身を潜めて発信源を覗く。 谷の上に架けられた小さな鉄橋。野山の前、雑木林に入る道の近くで三人組の男女が、一人の男子生徒を取り囲み、何やら不穏な会話を交わしていた。 聞く耳を立てて私は相手に悟られぬ様、慎重に会話を交わす男女の顔を一人一人確認する。  爽やかそうな印象を与える背の高い短髪の男子生徒。 もう一人は、明るい雰囲気を持つ背の低い短髪の女子生徒。 そして最後に、軽薄そうに見える金髪の男子生徒。 私自身が記憶している限り彼等との面識は無い。 それなのに……登校中、背の低い男子生徒に声を掛けられた時と同じ、奇妙な不快感を覚えて私は息を殺して相手の会話へ聞く耳を立てる。 「でも、でもさ。あの噂が本当なら。私達、あの子に取り付いたクルゥストゥス様を御還ししてない事になるじゃない。やっぱり景山君の言う通り、あの子を呼ばなくて正解だったと思うよ」 「……じゃ、じゃあさ。クルゥストゥス様は、あの子に憑いたままって事になるのか」  背の低い女子生徒の見解を訊き、軽薄そうな男子生徒の顔色も徐々に青みを帯びていく。 最悪の状況を連想したのか軽く身震いをし、間を置いて彼は言葉を続けた。 「それじゃ加納さんは、あの後、一体どうなったんだよ……」  話の中に含まれるキーワード……クルゥストゥス様に反応して、私も物陰の中に身を隠して自身の腕を抱き、視線を足元に落とす。 クルゥストゥス様と言えば学校でよく聞く有名な都市伝説だ。 先見の呪力を持つ神様とやらが自身に憑依している。 どうにも現実離れしており、オカルティックな余韻を残す彼等の会話から情報を組み上げて、私は半信半疑の念を伏せながら、もう一度彼等の様子を窺った。  
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