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そう言ったのと同時に鎧の男は父の顔を蹴りあげる。父の唇の端から血が流れ落ち、鉄のような苦い匂いが部屋中に広がっていった。
「カトリッシュ王の命に従うなら貴様を奴隷とし、生かしてやってもいい、………どうする?ここで死ぬか、奴隷となり、残りの人生を王に捧げるか…」
銀の槍が父の喉元に触れる。
「どちらかを選ぶがいい…」
「…………くっ!」
涙で目の前がぼやけていき、恐怖で意識が朦朧としていくのを感じた。
意味がわからない。………カトリッシュ王とはどういう人物なのか…、そして、この場にいる鎧の男達の正体は一体なんだろうか?
何故、獣人と人間は一緒にいては駄目なのか……数々の疑問が頭を回っていく。まるで未知の世界のようで知らないことが沢山あった。
「妻は何処にも渡さない!……たとえ王の命令であっても!」
父は顔を上げ、睨むのを止めなかった。こんな状況なのに、その顔にはまだ諦めの色は無く、戦う気でいるようだった。
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