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「いいだろう……俺がお前を殺してやろう」
男は銀に光輝く槍を高々と振り上げる。
いけない。このままでは父は死んでしまう。
「やめて!」
そう思ったシャナは無意識のうちに父の前に飛び出した。大勢の鎧の男達や、後ろで父の息を呑むのが分かる。
多分、自分はこのまま死んでしまうだろう。いくら幼いシャナでも、そのくらいのことは想像出来た。
けれど、あんなに自分のことを愛してくれた父が死ぬのを黙って見てることは嫌だったんだ。
「お父様を殺さないで!」
両手を目一杯左右に広げ、槍を持つ男を見上げると男はゆっくりと目を見開く。その瞳は赤く、まるで炎のような色をしていた。
「シャナ、どうして来たのよ!早く逃げなさい!」
すると背後で母が叫ぶ。彼女のそんな切羽詰まったような声を聞いたのは初めてだった。
「馬鹿な……まさか獣人と人間の混血だと?」
ぴたりと男の動きが止まった瞬間、父はその機会を逃さず近くにあった刀を使って切りつけた。だが、男の身に付けている銀の鎧は思ったよりも硬く、簡単に刀を弾き返す。同時に赤い瞳の男は反撃し、素早く槍を振り落とした。
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