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青く広がる空の下。
地平線が何処までも続く広い高原に頭の上に黒い耳がついた二人の獣人が座っていた。
「ごめんね…シャナ…」
目を伏せ、優しい手つきで頭を撫でる母に、シャナは首を傾げる。
「どうしてあやまるの?お母様は何も悪いことしてないよ?」
その質問に母は口を閉ざし、そして切なげに笑った。その笑顔の裏に隠された思いなど、まだ六つの子供には分かるわけが無く、シャナもつられて微笑み返す。
「それじゃ、そろそろ戻ろっか?お父さんも帰ってくる時間だし…」
森や畑で取れた作物を、竹作りの籠に入れて、母は膝についた土や草を手で軽く払い捨てて立ち上がった。
「うん!シャナね、お父様にお花あげるの。どう?」
シャナは先程摘んだ美しく咲く花束を、母に差し出し、嬉しそうに笑う。
「あら、綺麗な花ね…。きっと喜んでくれるわよ?」
色とりどりの花束を持ち、母と手を繋ぎながら朱に染まった丘を下る。
夕日により、二人の長く黒い影が揺れた。
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