プロローグ

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――――獣人。 以前、獣人とは、人間の体に獣の耳、尻尾がつき、身体能力や魔力操作の力が優れている者だと教えてもらった。それと同時に、自分は数少ない"狼種"だとも聞かされた。 父とは違う頭には黒い三角の耳が突き出て、触るとふわふわした感触がある。腰の方には耳より毛の長い大きい尻尾がついて、嬉しい時にはどうしてもつい揺れてしまうのだった。 これが獣人の証だというなら一つ疑問があった。 「お父様は?……お母様とシャナのようなお耳、ついてないけどいいの?」 「………………っ!」 そう。父は耳も尾も何もついていない。只の人間なのに――。 シャナの言葉に意表をつかれたのか、母は目を大きく見開いた。 「そ、そう言う意味で言ったんじゃないわ?私はお父さんを愛してるもの!」 でもそれは一瞬のことで、ごまかすように笑う。まるで何かを隠すような偽りの哀しい表情だった。
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