18人が本棚に入れています
本棚に追加
――――獣人。
以前、獣人とは、人間の体に獣の耳、尻尾がつき、身体能力や魔力操作の力が優れている者だと教えてもらった。それと同時に、自分は数少ない"狼種"だとも聞かされた。
父とは違う頭には黒い三角の耳が突き出て、触るとふわふわした感触がある。腰の方には耳より毛の長い大きい尻尾がついて、嬉しい時にはどうしてもつい揺れてしまうのだった。
これが獣人の証だというなら一つ疑問があった。
「お父様は?……お母様とシャナのようなお耳、ついてないけどいいの?」
「………………っ!」
そう。父は耳も尾も何もついていない。只の人間なのに――。
シャナの言葉に意表をつかれたのか、母は目を大きく見開いた。
「そ、そう言う意味で言ったんじゃないわ?私はお父さんを愛してるもの!」
でもそれは一瞬のことで、ごまかすように笑う。まるで何かを隠すような偽りの哀しい表情だった。
最初のコメントを投稿しよう!