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その日、彼が一番幸運だったのは神様が見ていたことだった。
「おらぁっ!今日も!きもいな!」
足元に転がる真面目そうな青年にエクスクラメーションマークごとに蹴りを入れる不良。
髪を金髪に染め、耳にピアスをつけ、素行の悪さが滲み出ている。
「おいおい、顔はやめとけよぉ」
それを見ながら冗談を交え、笑う不良達。この現状は今問題のいじめと言われるものである。
それもかなり過激な。
「リョージはモヤシをボコるのが好きだな」
リョージとは今、青年に暴行を加えている方の名前でモヤシはいじめられている方のあだ名である。
「気持ち悪りぃこというなよな!こいつがやってほしそうな顔してるからよ!俺はイヤイヤなんだぜ?」
周りの笑いを誘うリョージと呼ばれる不良。このグループのリーダー格のようだ。
キーンコーンカーンコーン
そこにチャイムが鳴り響く。これは昼休み明け、五時間目が始まるの予鈴である。
「ちっ、だるいけど行くぞ。モヤシ、今日も放課後来いよ。来なかったらどうなるか分かってるよな?」
脅し文句を少し垂れ、目で威圧し、不良達を連れて去って行く。
普段人が来ることがまったくないこの場所はリンチと告白をするにはもってこいの場所でいる。
なので1人倒れているモヤシに気付く人は誰1人としていなかった。
「リョージ、確か今日は山路さんから呼び出し受けてんじゃなかったか?」
「あ、っべ!そういやそうだったわ!まぁ、行く前にあいつを少しボコしていきゃいいべ!」
不良達にとってモヤシらそれだけの存在にすぎない。ただの暇つぶしであり、ストレス解消でもある。
今まで、そしてこれからもそのままの状況が続く筈だった。
そう。彼は今日、幸運だったのだ。
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