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またフラッシュ焚いてシャッター切ったら。竹兄の笑顔が明かりの中に浮かび上がる。
次々と面白いポーズをしてくれるから何枚もカメラに撮るけど。
――あれ?枚数はあるけど、なんだか1枚もカッコいい写真撮れてないんじゃ…。って疑問がふと湧いた時に。
「こんな寒い処で何をしているんですか」
お父さんの声が神門の向こう側から聞こえてきたから。竹兄は両手を上げて前後に大きく足を開いた面白いポーズしてたところを見つかったから、慌てた様子で起き直って罰悪そうに。
「何でもない。――ただいま」
「お帰りマサヒコ。サトリ君も」
「只今戻りました。――お父さん。竹兄がこのカメラ誕生日のプレゼントにって俺にくれたから、使い方を教わってました」
「そうでしたか。――お祝いの支度も出来て、母さんも待っていますから、そろそろ戻ったらどうですか」
「はい」
俺はストラップを首にかけて落ちないようにしてから。足元に置いたままだった箱を両手で取り上げる。
そう言えば…un nuage出てから、建君から貰ったプレゼント見たり、竹兄のくれたプレゼントで撮影会とかやって何となく盛り上がったけど。折角一緒に居られた二人だけの時間が呆気なく流れて終わってた事に気づく。
神社の境内裏の屋敷に帰りながら隣に並んで歩く竹兄に。
「たけにー」
「ん?」
「カメラ有難う。――大事にするからね?」
もっと話したい事あったはずなのに。こんな事しか言えない俺に。
「ああ」
竹兄はまた並んで歩きながら、頭を撫でてくれた。
竹丘家に来てから、誕生日を祝ってもらうのは4回目だ。今回も竹兄が来てくれて久々に『家族全員』で居間でくつろいでたけど。壁掛けの時計を見上げた竹兄が、ソファーの背もたれに掛けてたショートコートを着込み始めた。
「じゃあ、俺はそろそろ」
青いマフラー捲きながら、立ち上がった竹兄は。
「卒論通って院の試験もパスすれば一度こっちに戻るから。――次もし来られるとしたら3月末くらいかな…」
次帰ってくるのはもう、4か月も先なんだ…。
「そうですか。解りました」
お父さんは頑張れとか、家から通えとか、激励もお小言も何にも言わないのは、竹兄の事信頼してるからなんだって凄く良く解るから。
実子の竹兄と同じように竹丘家の子として俺の事後見してくれてるお父さんとお母さんには本当に感謝してるし。
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