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「…何だろう、コレ」
ラレーのロードバイクを修理するのに工具を探してカーポートの物置をを引っくり返してたら、しわくちゃのビニール袋に手が触れて、引っ張り出して確かめた。
中にはヨレヨレの花火が20本くらい入ってる。
「あ。夏の残り物かぁ」
思い出した。
君がルン君から横っ腹に穴開けられて入院してる間。
昼間ルン君がいなくて、ベッドの上でつまんなそうに外眺めながら『今年もろくに夏らしいコトしなかった』なんて突然言い始めたんだよ。
『またそんなコト言って…、夏なんか嫌いだって。――俺が誘っても全然遊びに行ってくれなかったじゃん』
『外暑いし。何かべたべたするし。―――アイダさんと外出かけると基本自転車だし』
なんて、文句しか言わない君に。『じゃあ、何か夏らしいコトしようよ』って、俺が次のお見舞いの時に近くの百均で買ってきた花火セット。
お腹痛いし歩きたくないって、面倒臭がる君が、もうルン君の後追いして病室を歩き回るくらい元気だって知ってたから。
無理やり横抱きに抱き上げて。日が落ちて間もない病院の屋上に連れて行ったっけ…。
あの時と今で。
君と俺との間にある何かは、変わってしまったのかなあ。なんて考えてみる。
残り物の花火と一緒に、そのまま忘れちゃったみたいだ。
「――」
もともと入っていたパッケージから出された挙句、乱暴にビニールに突っ込まれたまま放って置かれた花火たち。
俺がもし花火だったら、こんな扱いされたら文句言いたくなっちゃうよ。
「ごめんごめん」
聞いてくれてるとも思わないけど思わず花火たちに謝りながら。どうしようかな、と手の中でもてあそぶ。
「花火は…華々しく燃えて散るから意味があるってね」
俺はラレーの修理はやめて、ビアンキのロードバイクを家の前に引っ張り出したら。Pコートとスヌードを着込んで、ライダーグローブを手に嵌めて準備を万端にする。
「よーし、いっけー!!俺!」
得意のアポなし突撃をすべく、ビアンキに跨ったら、カルナバルパンドラに向かって思い切りペダルを踏みしめた。
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