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できるだけゆっくり歩いてたつもりだったのに、たったの30分で神社の鳥居までたどり着いて。90段の階段を並んで登り始めた時に。隣の竹兄が斜め掛けにしてたバッグの中を手探りし始めた。
「――シャケに先越されたけど…俺からもあるぞ?プレゼント」
ほら、と取り出したのは、片手には乗らないくらいの結構大きな箱だ。
「御前が此処に来てから4年か…。――じゃなくて、誕生日おめでとう」
丁寧に両手で差し出されたから。俺も両手を出して丁寧に受け取って。
「有難う!」
万が一手から落としたりしたら困るから。そのまま抱きかかえるようにして階段を昇り続ける。
「何だ…開けないのか?」
さっきの建君のプレゼントも歩きながら開いたから、これも直ぐに中身を確かめるのかと思ったんだろうけど。
「落としたら嫌だから…家に着いてからじゃだめ?」
「落とすなよ。いいから此処で開けてみろって」
理由は解らないけど竹兄は焦っているようにも見える。何だろう、早く見てほしいのかな…。
「解ったけど…じゃあ階段昇ったところで座ってでもいい?」
「いいぞ」
それなら。って勢いよく残り半分以上ありそうな階段をダッシュで昇り始める。
「おい小野!!」
竹兄を置いて登り始めたから、後ろから声だけ追いかけてくるけど、もう待ってられない。
「たけにー早く!」
振り返ったら、返事の代わりに竹兄は手をあげてる。
一足先にたどり着いた俺は。振り返って神門の前に居る獅子と狛犬の間に腰かけてから、ゆっくり登ってくる竹兄を待ってた。
「竹兄ここここ!」
って俺の隣をぺちぺちと手でたたいて促す。
「ハイハイ」
大きく息を吸ったり吐いたりして呼吸を整えながら、竹兄が隣に座った。
膝の上に乗せてた箱は、ウルトラマリンブルーの紙で包まれてたから。またそれを丁寧に剥がしてみたら。中からシンプルな漆黒の箱が現れて。蓋のところには真っ赤な「SIGMA」のロゴがプリントされてた。
このロゴ。見おぼえがあるから、指先でなぞりながら。
「――しぐま…?」
箱の横には、大きなレンズが装着してあるカメラの写真が載ってた。
「そう。最近発売されたSIGMA光学器のSA-9だ」
シグマって俺は聞いた事ないメーカーで。カメラに興味のある人とか、専門に扱う人しか知らないんじゃないかと思ったけど。折角こんな凄いもの貰っても、俺に使いこなせるのか不安になる。
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