New Year's Eve×5 ~壱成の長い1日~

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 あのお姉ちゃんは出勤途中って解りやすいスーツにヒールにコートってファッションだったから、さっきのお兄ちゃんみたいに追いかけられる事はなかったけど。 やっぱりポケットからスマートフォンを取り出したのが解ったから。 俺は手元でカードを取り出すと『バルバラ』を小さな虫に変えて呼び出して。 『おねいちゃんがメールでもツブヤキでもらいんでも何かエルの事カキコミそうになったら――』 今回はスマホトラブル指令。 最近じゃあ静電気で不具合起きたとか再起不能になったなんて話もあるからね…。それで行ってみよう?って指令を残して、四谷駅でドアが開いたら二人でまた人の流れに巻かれながら降りる。 乗換の四ツ谷駅で、5分程度の乗り換え時間の間にも。 エルが本物か確認しようと、すれ違いざまに振り返って近づいてきた輩には、次のカード『コンスタン』を全然顔の違う男に仕立ててエルと同じ格好させてぶつけて囮にさせる。 移動しているときは同じ方向を向いて歩いてるヤツよりも、向こう側から歩いてきてすれ違う方がどうも気づかれやすいと解ったから。 左隣を並んで歩いてるエルに気づかれないように、右手の指先に一枚ずつカードを挟んでは。 『ドロテ。エミリアン。フロランス。ギュスターヴ。エロイーズ…』 同じ名前を使わないよう、慎重にフランセーズアルファベ順に男女交互に次々と呼び出す。 『皆俺達の少し後ろを歩いててね?』 エルに気が付いたヤツが居たら一人ずつマーク。ケータイスマホで何かしようとしたら阻止。着いてくるヤツは…ケガさせなきゃ何してもいいから追っ払って。 たった1時間程度の移動で、エルに煩わしさを覚えさせる訳には行かない。 一番大事な事も釘を刺しておく。 『絶対にエルに気づかれちゃダメだよ?』 悪魔シトリーの得意技、憑代を使った遣い魔造りは。 天使の上位階級の熾天使や智天使、座天使だって騙しおおせちゃうくらいハイクオリティだから。 ゴメンねエル…。ちょっとだけ俺に、騙されてね? 『――イチ?』 次のフランセーズアルファベはQ。カンタンって名前にしよう…。 『なに?』 『オマエ珍しくずっと黙ったままだから』 ヤバい。何かしてるの感付かれちゃったかな。 『――ちょっとまだ眠い…。朝早いからかなぁ』 『そっか』 乗換で辿り着いたJRでも、次々とカードを消費して。25分乗ってる間にアルファベは2巡目の半ばまで到達してた。
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