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「バスとか電車とかって…座って揺られてると、凄く眠くなるんだよね」
バスの行先案内のアナウンスが時々流れる他はバスのエンジン音だけだから。エルの隣でまた少し眠くなる。
「『八幡神社前』で降車ブザー押せばいいんだろ?起こしてやるから寝ててもいいぞ」
「…へいきだけど…」
一番後ろの席の右側に座ってるけど、運転手から見えないの確かめてから、エルに少し体重預けて寄りかかる。
「やっぱりちょっとだけ…」
ゆらゆらが気持ちいいな…ってうとうとしてる間も。いくつか停留所のアナウンスが流れるけど乗ってくる客も居ないから、信号で止まる程度だ。
たった数分でいよいよ本格的に眠りそうになったところで。
『次は八幡神社前、八幡神社前…』
ピンポーン。とエルが腕を伸ばして降車を報せたら、『次停まります、バスが完全に止まるまでお待ちください』ってまた女声のアナウンス。
「イチ…。次だぞ」
「ん」
うーん!と両手をグーにして上に向かって大きく伸びをしてから、まただらーって脱力。
「もう一回寝たい。終点まで行って折り返そ?」
「いー加減にしろ」
ホラ降りろ、って追い立てられて。ダラダラと歩いちゃう。
「都バスみたいに一律料金じゃないから、もう一回タッチしてね?」
ちゃんと説明して、停まったバスの一番前まで言ったらぱすもんを翳した。
「ありがとーございました」
ってお礼言う俺に倣って、後ろでエルが同じようにぱすもんタッチしたら。
「あ…コノイトルン…さん?」
気付いた運転手に笑顔を返したエルは。タラップを飛び下りて振り返ると。
「ハイ!――お世話様でした!」
って、引き留められないようにバイバイと手を振ったら、路線バスも停まる訳に行かないから折り畳みドアを閉めた運転手は手を一つ上げて敬礼すると、クラクションを一つ鳴らしてくれてそのまま出発した。
「都心から電車でたったの30分で…こんな静かな住宅街なんだな」
見える処にはコンビニすらなくて。小さなマンションや戸建ての住宅が立ち並んでる人通りもない交差点だけで。エルはどっちの方向へ進めばいいのか立ち止まってぐるっと眺めてる。
「そうそう。「八幡神社前」なんて言っておきながら、神社全然見えないしね。此処から大体5分くらいで着くから」
俺もまだ1回しか来た事無いけど一応道は覚えてたから緑のオジサンのナビに頼らずに先に立って歩く。
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