New Year's Eve×5 ~壱成の長い1日~

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「サトリって中高生の頃は武蔵八幡に居たんだろ?――って事はこのあたりがほぼ地元ってコトだよな」 「小野ちゃんねぇ…、タケオカのお父さんの処に預けられた頃。物凄く荒れ放題で、毎日ケンカしてたみたいだよ?」 ほらコレ。と。竹丘宮司から本人極秘で入手してスマホに画像保存したお気に入り小野ちゃんの高校1年生くらいの写真は。 肩まで伸ばしたサラサラな髪をキレイなブロンドにしてる。 「――ドレッドにしてるのもあったけど、コレが一番かわいいよね」 今より少しふっくらした頬の輪郭でオンナノコみたいな小野ちゃんに。 「因縁って言うより…ナンパされそうだよな、このサトリは」 「ホントだよね。でもナンパでも因縁でもとにかく自分から手を出したコトは絶対ないし。地元では暴れたコト無いんだって」 「何か…『不射の射』の話みたいだな」 「ふしゃのしゃ?」 「知らないか?中島敦の『名人伝』だよ。伝説の弓の名手が、道具も使わないで弓を射るって話が噂になって。周りが見たいみたい、って騒ぐけど益々見せてもらえないから。『やっぱりすごい弓の名手なんだ』って伝説だけがどんどん先行した…って話」 「なるほどねぇ。誰も小野ちゃんがケンカしてるの見たコト無いのに。最強伝説だけが先を歩いてる…みたいな?ただ一回だけ。小野ちゃんが居るって聞きつけた武蔵八幡の近辺で色々騒ぎ起こした隣町の某高校のイケナイお兄さん達の30人くらいの集まりを…一人で乗り込んで、解散に追い込む程完膚なきまでぶっ潰したんだってよ?」 「…嘘だろ?」 「ね?今のすぐ泣いちゃう小野ちゃんから見たら有りえないでしょ?まさかたった一人で30人も無傷で倒せるはずないって。――一方的にヤラレタ奴等は、警察に駆け込んだけど『自分たちのケンカだろ』って相手にもして貰えなかったみたい」 「ただまぁ。――自分はどうでもいいけど、周りの大事なモノを壊す奴等を容赦しない、ってのは。ラファエルに似てるかもな」 「それを言うならルシフェルのほうが似てるもん!」 幾ら大好きなエルでも此処は譲れない。 「――あ。またあのポスターだ」 エルが町内会の看板でまたあの地味な八幡さまの初詣ポスターを見つけた。 「もー。やっぱりインパクト不足にも程がある。風景に馴染み過ぎ!」 ってまたご機嫌損ねたら。 「イイだろ馴染んで。まあ、電報舎からどんなデザインが来るのか楽しみだなぁ」
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