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最後の曲がり角を曲がったら。鎮守の杜の一角が顔を見せて。
「あ…アレか?」
住宅街に突然現れた、こんもりと盛り上がった丘に鬱蒼と茂った森。
「そうそう。この杜一帯凄いパワースポットだし、お父さんも見た目凄く優しそうな癖に、相当の力の持ち主だから気をつけてね?俺の評価は正直言うと。能力的にはソロモンより上。人間性もね…スカしたソロモンよりやっぱりずっと上」
「オマエその評価は個人的な恨みが大部分を占めてるだろ?気をつけろなんて言われてもなぁ…どうしろってんだ」
200mくらい森に沿って進んでたら。
境内まで続く90段の階段が漸く姿を現す。
時代がかった白い衣装着て、何て言うんだったか黒い縦長のコック帽みたいなの被った男性が、箒を持って掃除してるのが見えた。
「噂のお父さん登場だ」
って、階段の下まで駆け寄って手を振る。
「おとーさーん!オハヨー!来ちゃったよ~!!」
俺達に気づいたタケオカ父は。箒を往復するのを止めて、こっちに手を振りながら階段を降りてきた。
「オハヨウございますニノマエさん。――今日は恐らく午後だろうとマサヒコに聞いていましたが…早起きできたんですね」
「うん。――小野ちゃんの可愛い神主見習いコスが早く見たくて、ちゃんと寝てきたから」
「そうですねぇ。サトリ君の着付はニノマエさんにご満足いただける出来で仕上がってると思いますよ?」
今上で境内の掃除をお願いしてます。と、タケオカ父が大きな袖を広げるように、上を指し示す。
「うぁ…またこの心臓破りの階段を登んなきゃなんだよねぇ…」
「頑張って登ってくださいね。――という訳で?初めまして。タケオカと申します」
エルに向かってタケオカ父が穏やかな笑顔で手を差し出すから。慌てて仲介した。
「ゴメンお父さん。コノイトルンは知ってるよね?――エル。こちらがタケオカ宮司」
「ヒドい紹介だなお前…」
曖昧に笑いながら、エルも両手で握り返して握手しながら答えた。
「サトリとイチがお世話になってます」
「いや、ニノマエさんには私のほうがサトリ君の件でお世話になってます。それにしてもコノイトさん…テレビで見るよりずっと男前ですね」
なんて言うタケオカ宮司はタケオカ教授よりずっと世間に通じていてミーハーだって前もって教えておいたから。
「あはは。有難うございます」
時代衣装とのギャップにもエルは左程驚かない。
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