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「では、ご要望の御衣裳も準備していますからお二人とも着替えましょうかね。――その前に私は掃き集めた埃を一旦処分してから伺いますから、どうぞ先に上がってサトリ君の見習い奉公の様子を存分に撮っていて下さい」
タケオカ父は俺が首から提げてたデジタルミラーレス一眼を示しながら、
「貴方の姿はさしずめ戦場カメラマンですね」
いい写真が撮れたら私にも一枚下さい、とお願いされたから。
「任せといてお父さん!どんな素人でもシャッターさえ切ればチョーキレイに撮れるって勧められたカメラ買ったから。じゃあ、上で待ってマース」
小野ちゃんの昔のお宝写真一杯コピーさせてもらったから。お父さんには颯ちゃんと違って特別に、同じ趣味の同志(←)として特別にタダでプリントして上げちゃう約束をした。
「ホントバカだなぁオマエ」
苦笑いしてるエルと90段の急な階段を登り始める。
「誰でもキレイに撮れる、ってコトは。其処からが写す奴の腕の見せ所ってコトだろ?」
『――いいの、とにかく小野ちゃんが可愛く撮れるなら何でもイイ』
突然俺が心の声で話し始めたから。
「どうした?」
怪訝な顔を多分してるだろうエルの方すら見ないで俺は答えた。
『今はクチで喋れないの――昇るのに集中しないと…息が切れちゃう』
段数カウントするとげんなりするから数えないし。
俯いて足元見つめたままただひたすらより上の方の段に足を乗せる。
「イチおまえその運動不足…いい加減何とかしろ。俺の行ってるジムにお前も来い」
エルは流石に鍛えてるだけあって、話しながら登ってるのに息切れなんて全然ない。
『ヤダよ。急にハードな運動なんかしたらカラダも心臓もビックリしちゃう。――なーんて。実はワザワザジムなんか行かなくても毎晩ハードワークをエルと一緒にしてるんだな俺は』
知ってる?セックスって凄く頑張って1時間すると消費カロリーが大体300キロカロリーなんだってよ。って、何処かのダイエット特集記事で見たのを思い出して披露したら。
「嘘だろ…。ソレってジョギング1時間とそんなに変わんないぞ…」
なんてエルは愕然としてる。
『えーっと…毎晩最短でも2時間エルとやったとして…600キロカロリーだよ。ほら、俺だってすっげー運動頑張ってる!』
それなのに――毎晩頑張ってるはずの俺は。今どれくらいまで昇ったのか、喘ぐように口呼吸と共に息切れが始まった。
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