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「よーしイチ、良く頑張った」
いつの間にか90段の石段を先に上り詰めてたエルが、俺に向かって手を差し伸べてくれたから。
最後の2段はエルに引っ張り上げて貰っちゃってズルしたけど。
「――アリガト。は…。やっぱ、しんど、い…。こんな、とこ…毎日。上り下りしてる、お父さんって…やっぱり、凄いんだ、なぁ…」
やっとたどり着いた神門の前で、両ひざに両手のひら当ててもう前かがみで息を切らせてる俺の背中を、優しくエルがさすってくれた。
階下に居たタケオカ父がこっちを見上げて、手を振ってる。
何とか俺も右手を挙げてバイバイした。
「――あ、あれ?そういえば、からっぽだ…」
階段を登りきったところの神門の左右に鎮座してた石造りの神使達「獅子」と「狛犬」の『中身』が無いことに気づいた。
「空っぽ?」
「此処の神社ね。金色の巻き髪くるっくるライオンと、弱そうな白いちっちゃいわんこの神使が居て。俺この間初めて来たとき、敵認定されたんだ」
「ああ。何も入ってないみたいだな…それで「からっぽ」なのか」
俺も獅子と狛犬に遭ってみたい。なんて、エルは石造りで冷えてる左右の神使を撫でてる。
じゃあ小野ちゃんを探そうかな。なんて。神門の向こう側の本殿の方へ眼をやったら。
探す間もなく。
「――エルっ、見てよアレ!!」
神門潜ったずっと先。30メートルぐらい向こう側に。
白い着物に「浅葱色」っていうらしい淡い藍色の袴を穿いて。
蒼いマフラーでグルグルと首の回りをガードしてる小野ちゃんの背中発見。
肩を寒そうにを縮めながら、一生懸命箒で石畳を掃いてるのがまた…。
「や━━(*ノзノ*)━━ん☆!!小野ちゃん可愛い~!!!」
駆け寄って体当たりして嫌がるのも構わず抱きしめたいくらい可愛い。
「あんまり騒ぐとバレるぞイチ」
苦笑いするエルに腕を引かれて。神門の陰に一緒に隠れる。
「危ない危ない。早いトコロこいつでビシッと一枚押さえておかないと」
と、頼りのデジタル一眼を両手に構える。
「じゃあ俺はサトリに見つからないように境内の中回ってるから。――満足したら呼べよ」
「了解」
俺にも解らないくらい気配を消したエルが境内に入った後で。
戦場カメラマンのように神門に背中を預けて隠れて。手元で電源を起動する。
液晶画面に自分の足元が映った。
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