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そのままカメラのレンズを、神門の向こう側の小野ちゃんへ向ける。
液晶画面を確認しながら、慎重にズーム。
画角がどんどん狭まって、小野ちゃんに近づいていく。
朝日に照らされた小野ちゃんの横顔は。
緩やかな頬の輪郭。鼻筋が通って、俯きがちの瞳を彩る睫毛なんかバっシバシ。
見れば見る程美人だ。
エルとはまた違った魅力があるよね。なんてひとしきり見惚れてから。
「しまった――寄りすぎ寄りすぎ…」
キレイな顔を思わず画面越しにアップで観察しちゃってたのに気付いて、御衣裳撮るために少しズームアウトする。
よしよし。
御衣裳と本殿とイイ感じの画角で一枚目のシャッターを切る。
物陰からカメラと腕だけ突き出してる恰好が苦しくなってきて。
小野ちゃんがこっちに気が付いてないの確かめて。もう少し大胆に上半身を神門から覗かせて。
石畳ばっかり見てる小野ちゃんがこっち側には気づいてないのをイイ事に。
何度も寄ったり引いたりして10枚単位でシャッターを切った。
――あれ。小野ちゃん何か手を抜き始めた?
心の声で小野ちゃんが『お出かけですか?れれれのれー♪』なんていい調子で歌いながら、動かしてる箒の手が早まるのに気付いちゃって、思わず笑っちゃう。
「もー。ホントどんだけ人を萌えさせる気なのよ貴方」
声が動画で撮れたらイイのになぁ。
歌ってる小野ちゃんはご機嫌だ。
れれれのれーと何度もつぶやきながら、横顔の口元が微笑んでるのが見える。
可愛いからもう一枚えい!
ってシャッター押した途端。
小野ちゃんの肩がびくっ、と動いて。勢いよくこちらへ振りむく。
「――おい!出て来いニノ!!」
あー。残念。気付かれちゃった。盗撮タイムはコレで終了か…。
まあ…40枚は撮れてるから(←笑)間に合うなら出来の良い写真のデータをちょっとマルさんに送っておこう。
今更遅いけど小野ちゃんは手を翳して顔をガードしてこっちに怒った声で呼びかけてくる。
「あーあ。見つかっちゃった…」
観念して神門から姿を見せた。
小野ちゃんが某坂下に練習に出かけた後。マルさんに御願してたポスター三種300枚をタケオカ父にお祓いしてもらうために本殿へ向かってから。
初めて荷を開いて中身を確かめた。
「ニノマエ…。おまえコレ。小野に許可は取ったのか?」
3種類のポスターを前に、タケオカ教授が苦笑いする。
「許可?――今は無いよ?」
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