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「大きいことはいいコトだ、って言うでしょ?」
「もうそれ以上タテには大きくならないんだから、いい加減ドカ喰いするのやめなさいって」
「そうだね…」
そう。
もう俺が、君より大きくなる必要は、未来永劫、無くなったんだ。
「あ…」
俺の手の囲いの中で、萎むように消えて行った、オレンジの火の玉。
「ああ、消えちゃった…」
寂しそうな君の声に。
不意に抱きしめたい、って思ったけど、下手に動いたら足元にある火のついた蝋燭にぶつかりそうだから、せめて最後にこれくらい、と。
ちょっと首を伸ばして、蝋燭越しに唇を掠め取った。
「――っ?」
至近距離で驚いたように、君の黒く澄んだ瞳が見返してくるから。
ああ。不覚にも鼓動が少し早くなる。
ちゅ、と触れ合っていた温かい唇を解いて、冷えた空気が直ぐに熱を奪っていくのを寂しく思っていたら。
「え?…ぅわ!?」
ぐい、と、君にスヌードを引っ張られたから。足元の蝋燭の炎が君にぶつかるんじゃないかってヒヤヒヤして。俺が反射的にそれを足先で蹴飛ばしてバランスを崩して庭に転がるのと、一度離れたはずの君の唇がまた重なってきたのが、殆ど同時で。
「んぅ!?」
驚いて声を上げた俺の唇の隙間に。
するりと入り込んできたやわらかな君の舌に俺の舌が絡め取られて。
背中に寒さとは別のぞくぞくとしたものが駆け抜ける。
擽るみたいに口の中を探られて、次第にカラダがじわりと熱を帯びてくる。
俺の仕掛けた、触れるだけの子供じみたキスとは違う。口だけで君と交わるみたいな、唾液を絡ませ合うようなキスに弄ばれながら、
目の前の、俺には可愛くしか見えなかったはずの君が、知らない間にぞっとするほど艶やかな色気を纏った姿に変わっていて。
俺の首筋のラインを探るように撫で上げる指先まで色気を含んでくる。
魂が抜けかけた自分に喝を入れて、何とか君を俺の上から横に退かせて起き上がったら。
濡れた唇を指先で辿った君は。苦笑いした。
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