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「『今は無い』か――事後になるのは仕方ないとしても…ちゃんと小野に説明しておけよ?」
なんてタケオカ教授に苦笑いしながら釘を刺されて。
「はーい」
「ホントにオマエは…。金にモノ言わせてとんでもない事するなぁ」
大幣を持って現れたタケオカ父が、並べたポスター300枚を目の前に祝詞を挙げ始めた。
エルとタケオカ教授と3人で並んで首を垂れながら、お父さんの低い声で紡がれる祓が拝殿の中に響くのを聞く。
――天清浄 地清浄 内外清浄 六根清浄…――
自分までお祓いしてもらったような清々しさを最後には感じる。
「――ではニノマエさん?このポスター。どうしましょうか」
「うん。もう200枚は貼るトコロ手配してるからちょっと配りに行かせるんだけど…。お父さん、此処に俺の遣い魔呼んでもいい?」
ポケットに残ってた憑代のポーカーカードを手にしたら。
「拝殿内と参道の上は主祭神様がご機嫌を損ねますからご容赦ください。それ以外なら私がご一緒している間だけに限って、どうぞ?」
「ゴメンお父さん、直ぐ終わらせるから」
慌てて外に出て。石畳を外れた境内の広い処でまた、ポーカーカードをフラリッシュしながらフランセーズアルファベでまた交互に男女の名を呟いて行くと。
次々と揃いの紺色のスーツに黒いコート姿の若い男女が現れた。
「おいおい…スゲーな…どんなトリック…っていうか――そうか、コレは御前の『悪魔の力』なんだよな」
なんて、驚いてはいるけど適応能力の高いタケオカ教授は面白がってオーディエンスになってる。
30人程呼び出したところで。
「はーい皆。集合~!」
手を叩いてうちの子達に隊列を組ませたら。デキる営業、電報舎のマルさんがつけてくれてた貼出先リストを順番に配布する。
「それぞれ貼り出し先と相手先担当者と枚数が書いてあるから確認して配達してきてね?」
一番遠くても某坂下だよ。そんなに時間かからないよね?
それじゃあよろしくー。って声かけたら。
わらわらと慌ただしく動き始めた優秀なうちの子達は。ポスターを手分けして必要枚数毎に分け始めた。
「――という訳で、ご近所の貼り換えは、お父さんにお願いしてもいい?」
「解りました。此処までしていただいたのですから、手配しましょう」
と請け合ってくれたタケオカ父の横で。
「――あ!そうか!!」
突然大きく手を叩いて、タケオカ教授が俺の事指差したから。
「何?」
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