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新しく刷り直したポスターの掲出手配が終わって。
タケオカのお父さんに宣言したとおり、方々に貼り出して余った70枚のポスターを参拝客に売り捌くために、元旦の武蔵八幡で神職見習いとして社務所に入って売り子のお手伝いをすることになった俺は。
お父さんからお札の種類とかお守りについて色々心得を聞いてた。
「オマエただ神職の装束が着たいだけだろ?」
竹兄が外野から要らない野次を飛ばしてくるから。
「うっさいよ竹兄。小野ちゃんから聞いたけどアナタ。生まれて此の方、神社のお仕事手伝った事皆無なんでしょ?」
アナタもお父さんの血を引いてるんだからそれなりなはずなのに、磨きもしないで…ホントに罰当たりなのはどっちでしょうかね?なんて速攻で抗議したら。
「この神社も、親父も『普通とは違う』ってコトぐらいは、俺だって小さい頃から何となく解ってたからな。だから――殆ど力のない俺が継いだらそれこそこの神社にとって良くないだろ?――向いてないって自覚があるから出来る限り避けて。全く関係ない研究職に就いたんだ」
「なんだ竹兄…ちゃんと継がない理由が、あるんじゃない。――お父さんは知ってたの?」
「いや…。初めて聞きました」
なんて驚くお父さんを見てたら。
白状した竹兄もちょっと罰悪そうにしてるし。ちょっと苛めたのは可哀想だったかも。って反省しちゃった。
「――竹丘家の家庭の事情を大暴露してもらったところで逃げるみたいで申し訳ないんだけど。俺達これから都心に戻るから」
「都心?――何処に行くんだ」
「うん。アイダさんから強奪したチケットでエルと渋谷で観劇デート」
今夜はアイダさんが衣装担当してる某国立劇場のシェイクスピア劇をエルと見に行くことになってた。
「ハイハイ。行って来い。――昨日は泊まるの泊まらないの騒いでたけど、もう此処には帰って来ないってコトで良いんだよな?」
「何言ってるの竹兄。お正月まで俺達此処の社務所で御厄介になるよ?」
毎日小野ちゃんと神職見習いするんだもんねー?とタケオカ父に振ったら。
「ええ。サトリ君も居ますし我が家へどうぞと勧めましたが、ニノマエさんは社務所が良いと御希望ですからね。社務所は宿直用ですが宿泊設備も揃ってますし。お二人とも其処で宜しければ…」
「二人?やっぱりコノイト君も泊まるのか」
「ハイ。今から向こうに戻って、着替えを取ってきます」
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