New Year's Eve×5 ~壱成の長い1日~

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何をバラされるのがそんなにイヤなのか。こんな慌ててるエルを観るのは珍しいから。 「えぇ!?聞きたい聞きたい。教えてよ颯ちゃん!」 教えてくれたら、今朝ゲットしたての、小野ちゃんの可愛い神主見習い姿の写真上げるから。って。 ホントは颯ちゃんには高額で売りつけるつもりだった(←)大事な写真を渡してでも、その俺の知らない中学生の頃の「いい加減なエル」情報が凄く聞きたい。 「そう言えば今日、貴方達は一日武蔵八幡へ行っていたんでしたね…。イイでしょう。サトリさんの写真とコノルンの過去、交換条件としては悪くありません」 「颯君まで――俺を売るのか?」 悲壮な表情をするエルが少し可哀想かも…って思ったけど、颯ちゃんは全く気にしてないのが凄い。 「『売る』なんて人聞きの悪い…。ホントの事を言うだけですよ。――ニノ。この人の前では話が出来ませんから。後でメールで送るということでも良いですか?」 「イイよ。じゃあ俺も編集次第小野ちゃんお宝写真メールで送ってあげる」   目出度く交渉がまとまった処でブッフェに辿り着く。 開演前だからまだ人が少なくて、隅っこの方のテーブルが選べたから、脚の高いテーブルを三人で立ったまま囲んだ。 「じゃあ俺が頼んでくるよ。――何が良い?」 なんて、メニューを眺めて指で辿って行ったら。 「あ、私はこの『ボウモア10年テンペスト』を、ロックでお願いします」 って、颯ちゃんは迷わずシングルモルトウイスキーを指差した。 「颯君!?」 「一杯だけですよ。何せこのシングルモルトは日本では2011年に数量限定で販売されたもので…。まあとにかく。今夜の演目『あらし』に相応しいでしょう」 『テンペスト』は『嵐』『暴風雨』って意味だからという事でわざわざコレを準備したのだと思えば。乗ってみるのも一興でしょう。 「颯君。饒舌なのは返って言い訳がましく聞こえるぞ…。俺はコーヒー。あとこの『ローストビーフとチェダーチーズとクレソンのサンド』」 「あ!私もソレ食べたいです…クレソン抜きで」 「何我儘言ってるの颯ちゃん。国立劇場のブッフェで『クレソンサンドのクレソン抜き』なんて。もすばーがーのパテ抜きじゃないんだよ?」 「――香草が苦手なんです。解りました、では私はフィッシュアンドチップスを」 「ハイハイ」 俺はとりあえずシャンパンカクテル。スモークサーモンとレタスのサンドイッチをオーダー。
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