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「ゴメンゴメン。別に取り上げるつもりは無いから。――大丈夫だよ、颯ちゃん。3時間しかないけど、二人で楽しんでおいで?」
自分ひとりが大人げなく不満の声を挙げていたことに気づいた颯ちゃんは慌てて。
「え!?いや…あの…――ありがとうございます…」
この人は何と言うか…弄った時の反応が色々と目まぐるしくて面白い。
「お礼なんか言わなくてイイの。――ああもう、あと15分だね。そうだ颯ちゃん。此処まで何で来たの?」
「O線です。某国立劇場から西新宿4丁目駅まで15分歩けば、乗り換えなしで一本で日のテレまで行けるので」
「ちょっと面倒だけど、帰りはSi線経由で新宿でO線に乗り換えてくれないかなぁ」
新宿駅はあらゆる乗換路線の改札口に小野ちゃんのポスターが貼ってあるから。其処はきっと小野ちゃんの事に目敏い颯ちゃんなら見つけるはずだ。
「どう戻っても私は構いませんが…」
「新宿駅でちょっと面白いモノ見られるから」
俺とエルはとりあえず、掲示した後の写真はうちの子達から報告貰って見てたけど。生で見るのはきっと颯ちゃんが初だ。
「…?解りました。では帰りは新宿で乗換えます」
食べ終わったり飲み終わったりしたコップをまたトレイに乗せて。カウンターに戻したら。
ほんの30分足らずでこの会もあっさりとお開きになる。
「颯ちゃんとはお正月の武蔵八幡までお別れかな。――中継の仕事の後はどうするの?」
「生中継は小野さんが演武する朝一回で。後はスポットニュース用の数分の撮りを何本かすれば終了なので…。昼頃には帰る予定ですが」
「俺と小野ちゃんとアイダさんが、神主見習い装束で武蔵八幡グッズ(←)を売り捌いた後、初詣して。夜社務所で打ち上げ飲み会するから残りなよ」
「なにソレ…俺聞いてないよ。にの」
「うん、言ってないよ?だって今決めたから」
「だからどうして俺が売り子なの…」
「そりゃあエルや颯ちゃんが立てればイイけど。事務所やひのテレ的にNGに決まってるじゃない。じゃあ、詳細は二人にも後で連絡するから」
さっき颯ちゃんをナンパした大階段で別れて。俺達は1階の6扉に向かった。
アイダさんがくれた最前列のこの席。オーケストラピットでリハーサルしてるのが見えてちょっと面白いかも。って下の方覗いてたら。
「オイ壱。後ろ」
エルに促されて振り返ったら。2階席のアイダさんと颯ちゃんが見えて手を振った。
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