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「――颯ちゃん乗換口でちゃんとポスター見つけられたかなあ」
エルと並んで萌え萌え神主見習いの小野ちゃんを見上げる。
「颯君は絶対写真撮ってるだろ」
ってエルが言うから、劇場でスマホの電源オフしたままだったのを思いだして、ポケットから取り出す。
「あ!俺も自分で撮ろう」
電源ボタン押したら。
何度も震動して。メールや電話の着信があった事を報せてきた。
「あ。――颯ちゃんのメールと、小野ちゃんは…電話?」
「きっと二人ともこの件だぞ」
「アハハ。小野ちゃんも乗換駅でビックリしちゃったんじゃない?」
取り敢えず颯ちゃんのメールを開いたら。
『@新宿駅』って標題のメールは。
小野ちゃんが居合してるバージョンの武蔵八幡初詣ポスターの前に並んで、親指立てて自分撮りしてる颯ちゃんの写真付きだ。
「見てエル。颯ちゃん嬉しそう」
「アハハ。――ホントだ。これなら日のテレに帰っても、仕事頑張れそうだな」
『貴方の差し金とは解っていますが、これはイイ仕事ですね』
って本文が添えてあって。
『コノルンの例のデビュー前情報はまた後で』
って続いてた。
「颯君忘れてなかったか…」
「忘れてもらったら困るよ。――エルも写真撮るなら今の内だよ?」
人に気づかれるまえに撮って。早くタクシープールに行かないと。
「そうだな」
なんて。エルもコートのポケットから取り出したスマホのレンズを小野ちゃんのポスターに向けた。
「――じゃあ俺は…何があったか小野ちゃんに電話掛けてみようかな」
「ええ?――どうせキレられるだけだから放っておけよ」
「大丈夫大丈夫。小野ちゃんがキレるのには慣れてるから」
って。通話アプリから小野ちゃんに発信したら。
『――にの!!!!御前アレ何だッ!!』
待ち構えてたのか直ぐ応答した小野ちゃんは最初から興奮気味で、多分電話の向こう側では大声で怒鳴ってるんだろうけど。最初から受話音量最少にしておいたから、小さくしか聞こえない。
「え?小野ちゃん、何突然。何の事言ってるの?」
『惚けんなよ!!ポスターだよポスター!新宿駅とか…武蔵駅とか…何時の間に一体何枚貼ったんだ!』
「え~?今日小野ちゃんがお稽古に行ってる間に、主要駅と沿線上の駅に200枚貼ったよ?」
『にひゃ…――ッ!』
つー、つー、つー…。なんて切断音が続いた。
絶句した小野ちゃんは勢いで通話を切っちゃったみたいだ。
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