New Year's Eve×5 ~壱成の長い1日~

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「あ――小野ちゃん興奮して電話切っちゃったよ」 「帰ったらサトリに速攻で文句言われるぞ」 「大丈夫大丈夫。今夜は会わないから」 俺達が暫く寝泊まりする社務所の鍵は既にお父さんから預かっているし。 神社の裏にある竹丘家の屋敷とは離れてるから、戻っても気づかれることは無いはず。 「俺の家に寄って武蔵八幡に戻ったら、日付が変わってるでしょ?――もう小野ちゃんも疲れて寝てるって」 「そうか。明日になったら流石にサトリも諦めて大人しくなってるかな」 エルも満足行くくらいの写真は撮れたのか、スマホをまたポケットに戻したから。 「じゃあ、行こう?」 西口のタクシープールでタクシーに乗り込んで、まずは滞在する間の荷物を取りにカルナバルパンドラへ向かった。  エルから『準備30分くらいで大丈夫か?』って聞かれたけど。 俺は1分かからないで終わっちゃってたから。エルが忙しくウォークインクローゼットから色々取り出してスーツケースに詰め込むのを、暖炉の前に座り込んで灰かき棒を弄りながら待ってた。 「イチ、遊んでないでオマエも早く支度しろよ」 「え?俺もう、直ぐ出られるよ?」 驚いてエルが振り返ってきて俺の荷物を目視して。 「なんだその小っちゃいバッグ…。ホントにそれだけで荷物全部なのか?」 28日~1月1日まで5日分の荷物。 エルは海外旅行に行くの?ってくらいの、俺がよいしょ、って入れそうなスーツケースがパンパンになるほど沢山詰め込んで来てたけど。 俺は女子の通勤かばんみたいなミニボストンを肩にひとつ提げてるだけだ。 「エルこそそんなに沢山…何を入れてきたの?」 「何って…5日分の着替えと、嵩が増えたのはコートとブーツを入れてきたから」 「さすがエル。オシャレさん」 向こうに行ったらずっと神職見習いの御衣裳来てれば何も要らないんじゃないかと俺は思ったから。 何が入ってるって聞かれれば。シンプルに財布と下着とスマホの充電器だけだ。 「良く考えたら、――御衣裳だって和服なんだから下着すら要らないのかも」 そしたら財布と充電器だけポケットに入れたら、別に手ぶらでも良かったじゃん。って言ったら。 「イチ…――実はサバイバーだな」 「女子だった頃は出かけるって言うとホント色々持ち歩いてたけど…今回オトコノコって実は凄く楽ちんだって気がついちゃったんだ」
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