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今朝武蔵八幡の階段を掃除してたのは、竹丘宮司ではなくてサトリだった。
「しかもまだ寝てるのかコイツ…何しに来たんだよ一体」
箒を持ったまま階段を降りてきたサトリは。
俺の背中に背負われて寝てるイチの顔を小突いてくるから、その手から逃れながら。
「悪い。イチと荷物上に置いて来たら俺が直ぐ手伝うから」
「言うのは我慢しようって思ったけどもう俺ムリだわ。ルンはさぁ…、此奴に甘すぎ――って言うか、お互いに甘やかしすぎだぞ」
ほら荷物貸せよ。そんなの背負ってたら持てないだろ?って。
文句は言うけどホントはサトリは俺達の事については凄く理解してくれてるのは解るから、素直に甘えた。
「ありがとう。頼むよ」
よし、任せろ、なんて言ったサトリが、ハンドル収納したスーツケースを持ち上げたら。
「うぁ゛!!何入ってんだコレ!?」
人が入ってるんじゃねえのか?重すぎんぞ!!って。数段上げては荷物を置いて休む。ってのを繰り返した。
「イチにも…何がそんなに要るんだって不思議がられた」
「え?コレ二人分の荷物じゃねえのか?」
「それは俺のだけだ。イチのはほら、自分で担いでるこれだ」
壱の肩にかかった小さなボストンバッグも。荷物が少なくて余裕があるから潰れ気味だ。
「コイツも極端に少なすぎるだろ…。御前等加減ってのが解んないのかよ」
よいしょ、よいしょ。って掛け声掛けながら一生懸命サトリもスーツケースを運び上げてくれる。そのペースに合わせてゆっくりと階段を昇る。
「あ!!――そうだ、昨日御前等に文句言いたくて電話したのに…」
「ポスターの事か?」
「何時も貼ってるトコだけだったら自分で剥がして回れたのに…何だよ300枚も刷りやがって」
お蔭で昨日の夜あたりから、社務所あてに問い合わせの電話が来てるぞ。
「何て?」
「――俺は此処に常駐してるのかとか、正月1回しか奉納居合しないのかとか。究極は『L・Rとして歌うのか』とか…。ほぼ俺の問い合わせばっかりだ」
御前等今日掃除済んだら、社務所で1日電話番しろよ。俺は出ないからなって言う。
「ああ。俺は別にいいぞ」
って返したら。あんまりあっさり俺が応じるのに驚いたサトリが。
「え!?――イヤ…冗談だよ。お前にそんな事させられる訳ないだろ?」
「どうせ顔見えないから解らないだろ」
「俺が悪かった。大丈夫だよ。お父さんが対応してくれるって言ってるから…」
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