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やっとたどり着いた階段の一番上から町を見下ろす。
「あ~。やっと着いた…」
ぐるぐると肩と首を回すサトリに。
「ありがとう、此処まででイイよ」
「そうか?…じゃあ、まあ…ひと段落したら来いよ。お父さんは何か今日の午後、客が来るって言ってたから朝から忙しいみたいでさ。掃除俺全部任されちゃったから…ホント一人とかムリなんだよ」
今日の午後の武蔵八幡の客と言えば…イチが手を回した日のテレのロケコーディネーターの事だろう。
タケオカ宮司…サトリに颯君が来ること言ってないのか。
あんな穏やかな笑顔を作れるのに、やることは相当狡猾だ。
「解った。着替えたら直ぐ来るから」
「おう!」
元気よく袴を掴んで草履で走り去っていくサトリに、俺も結局打ち明けられなくて。
正月早々サトリがビックリしてから、直ぐにそれにも順応するんだろうな、なんて。
社務所の入り口に貼ってあった。浅葱色の袴で掃除をするサトリのポスターを眺めながら。
正月まで壱と寝泊まりする、社務所の鍵をダウンのポケットから取り出して差し込んだ。
(了)
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