412人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
初めてウチの親父さんに連れられてきたアイツに会ったのは、俺が高3の秋だった。
「マサヒコ。今度うちで預かる事になった、領君です。――領君、これがウチの長男のマサヒコ」
今度子供を預かると聞いていたけれど、ふーん?と鼻を鳴らす程度のいい加減さでしか聴いていなかったから、まさかこんな大きいコドモが来るなんて思ってなかった俺は。
「――…」
親父さんの隣で申し訳程度に下げた頭は、驚く程見事なブロンドで、しかも気合いの入ったドレッドヘアだったから思わずツッコミを入れた。
「なあ親父。コイツ日本人なのか?」
「領君の実家の小野家は竹丘とは遠縁にあたりますが…。他の国の方と縁があるとは聴いた事が無いですねえ」
俺が言いたいのはそう言う事じゃないんだけど、ウチの親父も大概に大真面目にボケをかましてくる。
「オイ。そんな金髪でも日本人なら喋れるだろ、挨拶くらいしろよ」
って促したら。
「成瀬領です。宜しく…お願いします…」
眼を合さずにまた頭を下げて聴こえるか聞こえないかという程度の挨拶をした。
「成瀬?御前小野じゃねえのか?」
「まあマサヒコ。それはおいおい話をするから。――じゃあ領君。部屋に案内しますからね」
親父が「おいおいする」と言ってたのは、連れてきた「成瀬領」が、小さい頃から何故か問題行動ばかり起こして、面倒を見られないと両親が放棄したのを皮切りに、長くても3~4年で里親になる遠縁の間をグルグルとたらいまわしにされてた挙句、ウチがどうやら4か所目だという話だった。
そりゃあ…見た目は女子か、ってくらい可愛い顔をしているのに、視線は常に殺気立っていて。ヘアスタイルは気合いの入った金髪ドレッドで中学2年生のする髪型とも思えない。
俺には無かった反抗期を地で行ってるのが面白くて、この預けられた大きなコドモを俺は何かと弄るようになった。
「オマエさあ。そんな気合い入れたカッコして良く怖い奴等に因縁つけられないよな」
朝は高校生の俺と同じくらいの時間に一緒に家を出るから。
多分中学校には毎日通ってるんだろうとは思うけど。
「知らない奴に――良く話しかけられるよ?」
いきなり周り囲まれて「名前は何だ」「どこ中だ」って聞かれる。なんて。
「成瀬オマエ…ソレを普通の奴は『因縁をつける』って言うんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!