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「まーこれから先もこれ以上理解できるとは思えねえけど…」
「マサヒコが急に干渉しても領君が驚きますから、今のままでいいですよ」
「ハイハイ。じゃー今迄通り適当に弄ってやるから」
「お願いします…――あ。噂をすれば。どうやら領君が帰ってきたようですよ」
俺はまったく解らなかったけれど。親父殿はこういう勘は鋭いようで。
程無く薄暗い境内の灯篭の灯に照らされて成瀬が現れた。
「お帰りなさい、領君」
足元が少しふらついているのか、
「――…た…だいま…」
息も絶え絶えな成瀬は、やっとの事で親父殿に返事をしてる。
「おー、成瀬。どうした御前。まさかその若さで階段昇ったぐらいで息切れしてんのか?なさけねーなぁ」
うちの神社は小さな山まるまる敷地として持って居て。麓から上に辿り着くまで90段の階段を昇る必要がある。
俺は毎日学校に通うのに上り下りしてたから今じゃ殆ど息切れも無く休まず昇ることができた。
「――…」
違う…と言いたげだったけど。結局その言葉は飲みこんだままで。ふい、と俺と絡んだ視線を背けて応えようとしない。
「マサヒコ」
親父殿が俺を窘めるように声を掛けてきたけど、『適当に弄れ』って親父殿が言ったんだしこれくらい、って思って。
「御前何か中学で部活にでも入ったのか?」
「――?」
再び俺に合わせてきた視線は明らかに『コイツ何言ってるんだ』って顔だったから。
「厨二なんて精々3時半にはガッコ終わるだろ。此処からダラダラ歩いても30分かかんねえのに。1時間半も学校に残る理由はねぇだろ?」
ウチ田舎だから駅前出たって一人でロクに遊べねえし。友達出来たならむしろもっと遅く帰って来るんじゃねえの?って立て続けに聞いたら。
成瀬は薄闇の中でも直ぐに解るくらい、は、っと顔を蒼褪めさせた。
親父殿が苦笑いして俺にブレイクを宣告する。
「止めなさいマサヒコ。――領君。行っていいですよ」
「――はい」
親父殿には従順な成瀬は。頭をひとつ下げると、境内の裏手にあるウチの屋敷に走って消えて行った。
「アイツ明らかに変だったよな」
腕組みをしてさもありなん、とばかりに頷いてやったら。
「マサヒコ御前という子は…『適当に弄る』という先ほどの言葉はどうしたんです」
「あ…忘れてた。って言うかコレも含めて俺の『適当』だから」
「本当に御前は悪い意味で適当ですね」
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