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砂糖たっぷりのメレンゲをゼラチンで固めてあるマシュマロは、成瀬につつかれる度にココアの中で溶けて小さくなっていく。
「――…」
気に入るとひとつのコトに集中する性質なんだろう。
成瀬はマシュマロが全部溶けきるまで優に3分はスプーン片手にカップの中とにらめっこしてたから。
俺は俺で勝手にクラウンチョコのパッケージ開けて、銀の包み紙を一欠片分だけ千切り取ったら、ミルクチョコレートをひょい、と口に含んだ。
そのままデミタスカップを摘んでひと口エスプレッソを流し込む。
「――」
甘すぎるミルクチョコレートと苦すぎる深煎り豆が出逢う時に起きる、
これぞマリアージュと呼ぶに相応しい組み合わせ。
舌の上から喉に流し込んだ後の余韻すら美味い。
なんて一人満足してたら。
「竹丘さん…?」
何時も此処に来る時は一人だから、連れがいること一瞬で忘れてた。
「全部溶けたか?」
スプーン握りしめてた手もそのままに、
うん(((。-_-。)なんて。素直な犬ころみたいに大きく頷くから。
よーしよしよし。って思わず手のひらにざらざらと不思議な感触のする成瀬の金髪ドレッドの頭を撫でてから。
「待たせたな。思う存分飲み干せ」
って言ったら。
スプーン置いて両手でカップを掴むと、ホントに一気に中身を飲み干した。
「美味いか?」
これで美味くないなんて言おうモノなら、二度とコイツには声掛けないって思ったけど。
「――…」
成瀬は凄く悲しそうな顔で俺の事見るから。
「どうした」
アウトだったかと内心がっかりしてたら。
「大事に飲めばよかった」
もうなくなっちゃった。なんて嬉しいことを言ってくれるから。
「あー。悪かったよ。俺が飲み干せって言ったからだな?スミマセーン!」
手を上げてマスターを再召喚。
「ココアお代わりくださーい」
二杯目のココアもやっぱり真剣な顔でマシュマロをつついてる成瀬に。
「――じゃあ。旨いモノ飲みながら順番に話してみようか」
俺が飲み終わったカップをテーブルの端に避けて、頬杖を衝いて対面から促したら。
「…何を?」
「トボけるんじゃないよ。どうしてあんな奴らに追っかけられてたんだよオマエは」
「――…」
困った顔で答えを探す成瀬は。マシュマロの角がまだ浮いて見える状態でスプーンを置いてこっちを見た。
「イチイチ相手にするのが段々面倒臭くなってきたんだ」
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