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「俺竹丘さんみたいに頭良くないし…別に勉強したいコトも無いし」
「まあ高校行って大学行くだけが人生じゃねぇ。――今すぐ決めろとは言わねぇけど。――コンビニのバイトなら何時だって出来るだろ?それは最後の手段に取っておいて。もうちょっと考えろよ」
学生長くやるほど、社会に出るまでの時間が稼げると思え。なんて。
成瀬とはたったの4つしか歳が違わないのに、俺も大概エラそうに喋るなあなんて、エスプレッソの苦さを口の中に思い出す。
「…解った」
「よし――じゃあ其れ飲み終わったら帰るぞ?」
明日も中間テスト続きがあるし。――コレでも受験生だから俺も帰って勉強するから。って促したら。
「――…」
また素直に頷いた成瀬はココアを飲み干した。
「お帰りなさい。珍しいですね。2人一緒に帰るなんて」
丁度参道の石灯籠に火を灯す時間に帰ってきた俺達に親父が声を掛けてきた。
「タダイマ。下で会ったから」
「ただいま――…」
怪訝そうな顔でこっちを見る成瀬を目で制して、二人で屋敷に向かう。
「そんな顔すんな。親父殿に今日の事全部喋っていいのか?」
「あ…」
そっか。――言えないね…。って納得した様子の成瀬は。
境内裏にある屋敷に戻るまでだんまりだったけど、俺が自室に入ろうとした時に。
「竹丘さん」
声を掛けられて振り返ったら。
「今日は有難う」
これだけ言うのに時間掛かったな。って苦笑いしながら。
「ま…今日は気まぐれで行ったにしては――少しはお互いの事が解ったいい機会になっただろ」
面白そうだから気が向いたらまた迎えに行ってやるよ、って入りしなに声を掛けると。
「うん」
笑ったら可愛さが増すのにやっぱり成瀬は髪型が残念だよな…って思いながら。お互いの部屋に戻って行った。
明日の中間テスト最終日のために、またノート読んだり補助教材の問題集を解いたりしてたら、ドアをノックする音が聞こえた。
「はーい。入ってまーす」
成瀬が来たのだと思って適当に返事をしたら。
「――居るのは解ってますよ。マサヒコの返事は入室許可になってないから、こちらが困ります」
と文句を言いながら入って来たのは親父殿だった。
「あ…いや。成瀬かと思って」
「そんな事だろうと思いました。――まあいいです。今日あった事を話しなさい」
「――何?」
「御前は嘘が上手いですが。領君を見ていたら気が付きましたよ」
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