冷や汗

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「坂ノ上先生!ここではなんですからどうぞこちらに!」 一緒に飲みましょう!と大きな手振りで満面の笑みの学年主任。 今もなお死んだ魚のような目をしているりっくん。 果たしてこの対照的な2人の間できちんと会話が成立するのだろうか? 2人の間にものすごく厚い壁を感じるんだけど……。 ていうか学年主任の視界に俺は一切入っていないもよう。 俺……隠れる必要なさそうだね。 りっくんの背後から2人の様子を伺いつつそっと体をずらそうとしたら、すぐさまりっくんの腕が遮るように俺の胸の前で制止した。 ……んん? 何で? 表情を確認する前に、さらに腕で奥へと追いやられる。最終的には元いた位置よりもりっくんの背中に回る形になった。 これでは学年主任の姿すら見えない。 …………何で!? 新手の嫌がらせに困惑していると、事態は思わぬ方向へ転がり始める。 「……すみませんが連れがいますので」 案外落ち着いた声色でそう言うと、くるりと踵を返し俺と向かい合った。 うおっ…………若干青筋を立てた営業スマイルが地味に怖い! そして学年主任が何か言葉を発する前に素早く俺の左手を取ると、そのまま脱兎のごとく走り出したのだ。 「えっ?……え!?」 「いいから行くぞ!」 まさかの逃亡。 今日は本当にまさかの連続だ。 りっくんに手を引かれ、足がもつれそうになりながらも必死に走り続ける。 学年主任のことが気にはなったけど後ろを確認している余裕は一切なかった。
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